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クラシックロックドリルの世界
F7/F8/F10 レッグドリル

f7とld64
F7(LD64レッグ付き)
fシリーズ


我が国の石灰鉱山は露天掘りでの採鉱が主になりますが、急傾斜の山が多い事から戦前は透かし掘法(下抜き掘、絶壁掘り)と呼ばれる採掘崖の下部にせん孔して発破を行い、発破の振動などを利用して発破の威力圏外のものまで一気に崩落させる採掘法が行われていました。
透し掘り法では計画通りに岩盤が崩落すれば少ない火薬量で大量の鉱石を得る事ができるため、明治、大正、昭和初期に広く行われましたが、崩落、落石による災害を避けられませんでした。
さすがに透し堀法は危険すぎると戦後は規制され、安全性を高めた傾斜面採掘法という採掘法に代わりました。
傾斜面採掘法では斜面を下から登りながら崩していきますが、鉱石を下まで落とすため斜面に一定以上の角度が必要であり、作業者は滑落防止のため、命綱で体を吊ってレッグドリルでせん孔を行いました。
さく岩機でのせん孔深さは3mから5mと深いため322Dよりも強力なレッグドリルが求められました。

左:透し掘法 右:傾斜面採掘法
左:透し掘法                  右:傾斜面採掘法
身体を命綱で吊るして急斜面でレッグドリルを操作する作業者
身体を命綱で吊るして急斜面でレッグドリルを操作する作業者

さく岩機の打撃力は①空気圧 ②シリンダ内径 ③ピストンストローク ④打撃数の4点で決まります。これら4点の数値を大きくすると打撃力は大きくなりますが、それぞれに長所・短所があります。

表1 さく岩機の打撃力を向上させる手段と短所   
No. 手段 方法長所 短所
空気圧を高くする 高圧コンプレッサを使用する 動作が確実になる 部品耐久性が低下する
部品が大きくなる
反動が大きくなる
シリンダ内径を大きくする シリンダの大型化 振動が抑制される さく岩機の重量が大きくなる
反動が大きくなる
ピストンストロークを伸ばす シリンダ長さの増加 振動が抑制される さく岩機の重量が大きくなる
反動が大きくなる
打撃数が低下する
打撃数を増やす ピストンストロークを短くする
空気圧を高くする
軽量化 振動が増える

空圧さく岩機設計では上記のバランスを取る事が重要になります。
外国製さく岩機も古河製さく岩機も打撃力向上のためのピストン内径の拡大はある程度までとした上で打撃数を増加させるという手段を選びましたが、外国製さく岩機はさく岩機が大型化して重量が増えても空気圧を高めるという方法を、古河はピストンストロークを短くしてさく岩機の大型化を避けて重量増加を抑える方法をとりました。
また打撃数が増えた新型さく岩機は人体に有害な振動が発生するようになったため、古河をはじめ各社共に防振ハンドルを装備したことから重量は更に増加しました。
そのため外国製さく岩機は日本人には一人で扱えない大きさとなってしまいました。

表2 外国製と古河製のレッグドリルの仕様比較   
メーカ 機種名 シリンダ内径x
ピストンストローク
本体重量 打撃数 空気圧
(カタログ値)
A社 JR300 φ76mmx67.5mm 34.2kg 2350回/分 6.0kg/㎠
B社 S93F φ90mmx45mm 28.2kg 3000回/分 6.0kg/㎠
C社 BBD90 φ90mmx45mm 28.2kg 2850回/分 6.0kg/㎠
D社 SL90 φ82mmx51mm 30.3kg 2900回/分 6.0kg/㎠
古河 F7 φ75mmx49mm 22.9kg 2450回/分 5.0kg/㎠
古河 F8 φ75mmx70mm 26.0kg 1950回/分 5.0kg/㎠
古河 F10 φ85mmx70mm 27.1kg 2600回/分 5.0kg/㎠
古河 322D
(参考)
φ70mmx70mm 25.0kg 1850回/分 5.0kg/㎠

FシリーズにはLB56レッグよりを強化したフィードシリンダ内径φ64mmのレッグが使用できました。さらに長尺ロッド対応の2段シリンダ構造にしたダブルフィードレッグ(LD64)もラインナップされました。
表3 レッグの仕様比較   
レッグ形式 LB64 LC64LD64
重量 14.2Kg 15.3Kg 20.4kg
全長(最短) 1385㎜ 1670㎜ 1416㎜
全長(最長) 2385㎜ 2970㎜ 3151㎜
フィードシリンダ内径 64mm 64mm 1段目64㎜
2段目50㎜
lb56 ld64 lc64 lb64
lb64
f7
f8
f10

F7のせん孔状態
F7のせん孔状態

傾斜面掘削法でも落石・崩落・転落による災害が多発したため採掘法は昭和45年(1970年)頃から大型のダンプトラック、シャベルを使用するより安全な階段掘り(ベンチカット)法に代わっていきました。現在は透し掘り法も傾斜面掘削法も禁止されています。

参考文献:「鉱山読本 第2巻」 1968年刊 山崎憲之資著 技術書院発行

次回はD77レッグドリル、D88レッグドリルの予定です。

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