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クラシックロックドリルの世界
第2回 ASD20

1920年代発売 重量:17.4Kg
ASD20
ASD20

1916年にさく岩機工場が完成すると、古河独自製品のASD11だけでなく、足尾銅山で使用されていた各種外国製さく岩機を参考にしてさく岩機を開発しました。
参考にしたさく岩機の一つが当時世界中でベストセラーとなっていた米国インガーソルランド社中型さく岩機BCR430、商品名”Jackhamer ジャックハンマー"です。(ハンマーの綴りはhamerとhammerよりmが一字少なくなります)
足尾で開発されたさく岩機の製品名はASD20と呼ばれていました。

当時の米国製さく岩機の性能・耐久性共にはるかに国産品を超えており、国産さく岩機は部品の互換性が無く、耐久性は外国製さく岩機の半分以下と評価されていました。
足尾では部品検査に当時最新の方式であった限界ゲージ法を取り入れて部品の互換性を保証すると同時に、耐久性向上のため金属材料並び金属組織の研究と改良を重ね国内他社さく岩機を大きく上回る耐久性を実現しました。
鉄道省納品前に完成したさく岩機と記念撮影(1920年代)
鉄道省納品前に完成したさく岩機と記念撮影(1920年代)。
足尾式ASD11の他はインガーソルランド社BCR430ジャックハンマー、LI26ドリフタ、CC-11ストーパー、 デンバー社W7ドリフタ等、外国メーカが設計したさく岩機が並んでいます。 (写真提供:古河足尾歴史館)
「大正六年八月ニハ特ニ東京帝國大学教授 俵國一博士(※)ヲ聘シテ、鋼材ノ組織學並ビニ鋼ノ熱處理法ニ關スル研鑽ヲ遂ゲタル結果、機械内部機構ニ特殊鋼材ノ應用等、從來ノ製作法ニ一大改良ヲ加ヘ製作技術ノ熟達ト相俟ッテ、機の性能及耐久力共ニ外國製品ニ比シ何等遜色ナキ優良品ヲ製作シ得ルニ至レリ。」
(足尾製作所沿革 抜粋)

※ 俵國一(たわら くにいち) 博士 (1872-1958) 島根県出身
ドイツに留学後、東京帝国大(現・東京大学)教授となる。日本に初めて大型金属顕微鏡を導入して金属組織学を確立し金属工学の発展を指導した。 工学院(現・工学院大学)第2代学院長

現存する当時の熱処理工場
現存する当時の熱処理工場。耐火建築のためレンガ造りとなっています。
BCR430の特徴は独自のバタフライバルブ(蝶型弁)を採用し、それまでは重量一式150Kg近く有る大型さく岩機(ドリフタ)でなければ不可能であった穴径40㎜クラスのさく孔を、手で持てる大きさのさく岩機で可能にした点です。
ジャックハンマーの成功により、穴径40㎜クラスのせん孔は重量20Kgクラスの手持ちさく岩機の仕事へと代わっていきました。
一世を風靡したBCR430も、より高性能なさく岩機の開発により使用されなくなっていきますが、商品名「ジャックハンマー」は現在でも手持ちさく岩機の一般名称として使用されています。
ASD20
重量 17.4Kg
シリンダ内径 57.2㎜(2¼インチ)
ピストンストローク 50.8㎜(2インチ)
バルブ形式 反動バルブ
REACTION VALVE
バルブ形状 蝶型
打撃数 1500回/分
バタフライバルブの構造
バタフライバルブの構造
バタフライバルブの構造


ASD20 動作の様子


次回はASD18(1930年開発)を紹介予定です。